Argumentは日本語に置き換えると「論理展開」を指し、Critical Thinkingの重要な要素の一つです。
自分の主張を相手にわかりやすく伝えるための論理展開方法で、アカデミック領域ではスピーキング・ライティングの基本スキルとして学習します。
Argumentは、基本的に以下の3つの段階によって構成されます。
前回の講座で紹介したボディの内容は、上記の構成に沿って展開していきます。
まずは、Claim(主張)として、Thesis Statementを肯定する為の自分の意見・解釈を述べていきます。
続けて「なぜそのようなスタンスをとるのか(Why So)」を述べ、主張に説得力を持たせていきます。
そして、最後に理由を裏付けるための論拠(客観的なデータや具体的な事例)を示します。
カジュアルなトピックでは論拠は主に自分の過去の経験を挙げる場合が多いですが、ビジネスシーンやアカデミックな場面ではFact(客観的に判断できる事実)やStatistics(統計値やデータ)を挙げることが一般的です。
論理展開の一貫性を高める
Argumentを理解する上でもう一つ重要なことが、Coherence(論理的一貫性)という要素です。
これは、「読み手にとって理解しやすい主張なのか」という観点で、発信するメッセージの意図が正確に相手に伝わっているかということを意味します。
論理展開の一貫性を高めるためには、以下の3つの観点を意識してメッセージを発信します。
- Logical Order = 主張が論理的かどうか
- Structure = 論理展開にまとまりがあるか
- Relevance = 主張・理由・論拠がトピックと関連しているか
特に重要な観点が、各センテンスの前後関係が「正しく繋がっているのか」という観点です。
よくある間違いとして、論理的なつながりがないにもかかわらず so / and / but といった接続詞を多用しているケースがあります。
同じ接続表現を使いすぎると、どのような論理展開なのかを読み手が判断しにくくなります。
それを避けるために接続詞(接続表現)が持つ役割を正しく理解して、センテンス同士を正しく繋ぐことで読み手が理解しやすい文章を作ることが大切です。
論理的一貫性を高めるためには、常に「聞き手は理解しやすいか」という意識を持つことを心がけてください。
また、英語の文章を読む時も構成を意識しながら読むことで、文章の意図をより明確に捉えることができるようになります。
抽象的な内容から具体的な内容に
相手が理解しやすい英語をつくるためには「抽象的な内容から徐々に具体的な内容に移行する」ことが大切です。
例えば、
- What is your strength?
- 「あなたの強みは何ですか?」
という質問に対して回答するとして、
- Well, I have the ability to see a situation from different perspectives.
- 「私はいろんな角度から物事を捉えることができます」
と具体的な答えを最初にしてしまうと、聞き手は何のイメージも共有しない状態で具体的なシーンを思い浮かべる必要があります。
本来伝えたい「視野が広い」というような意味が伝わればいいですが、人によっては「批判的に物事を捉える人である」と判断する可能性も大いにあり得ます。
なので、できるだけ抽象的なイメージから相手と共有して、
- I think one of my greatest strengths is as a problem solver. I have the ability to see a situation from different perspectives.
- 「私は課題解決が得意です。私はいろんな角度から物事を捉えることができます」
と、具体例の内容が結びつきやすいような抽象的な情報を先に述べることで、聞き手は前提を理解することができます。
文化的な背景や、根底にある価値観が異なる人たちとコミュニケーションを取る場合、最初から具体的な内容を話しても相手はなかなか理解することができません。
そのため、できるだけお互いが共通してイメージできる出発点から話を始めて、徐々にお互いの意識をすり合わせていくことで異文化コミュニケーションに起こるギャップを少なくすることが可能です。
良いArguementと悪いArgument
Arguementの良し悪しは、主張・理由・論拠の関係性によって決まります。
英語で話していると、回答することにどうしても意識が向きすぎて質問の意図に沿っていないことを話したり書いたりしてしまうことがあります。
それを避けるために、常に「何を問われているのか」を意識することを覚えておいてください。
Arguementの良し悪しを理解するために、
- Are you good at art?
- 「あなたは芸術が得意ですか?」
という質問に対する回答をそれぞれ載せておきます。
解答例をみる前に、自分でも頭の中で上記の質問に対してどのように回答するかを考えてみてください。
良い例
- Yes, I think I am good at art. It’s because I attended some art classes during my teen years. They were a great help during my growing years and taught me a lot of creativity. Now, I can easily draw simple day-to-day things like a pen or a face.
- 「そう思います。というのも、学生だった時に美術のクラスに参加していたからです。芸術を学んだことはとても役に立ちクリエイティビティが身につきました。今では、ペンや顔などのシンプルなものならを簡単に描くことができます。」
上記の例では「なぜ Art が上手いと言えるのか」という理由に対して、「芸術の授業を受講していたからである」と関連度の高い理由を述べることができています。
また、「今はシンプルな絵なら簡単に書ける」と「絵がどれくらい上手いのか」を証明する論拠も述べることができています。
全ての回答は質問との関連度が高く論理的な繋がりが明確なので、良いArgumentであると考えられます。
悪い例
- No, I’m not good at art. Actually, I’m not interested in art so I don’t know the value of Pablo Picasso’s drawings. But my partner loves it so I often go to a museum with her.
- 「そう思いません。私は美術が嫌いでピカソが何が良いのか分かりません。しかし私のパートナーは美術が好きなので美術館によく行きます。」
上記の例では「なぜ Art が上手くないのか」という理由に対して、「芸術に興味がない」という理由を述べています。
一見問題はなさそうですが、「Artが上手くないと言える理由」としては関連度が低く、質問の意図から逸れた回答になっていることがわかります。(仮にこれが論理的に正しいのならば、「興味がないものは全て上手くない」というロジックが正しいことになってしまいます)
また、”But” 以下でさらに質問の意図とは関連度の低い話が展開されており、質問に関連のある回答は “No, I’m not good at art.” の部分のみであることが分かります。
「Claim:主張」に対する「Reason:理由」の関連度が低く、また「Evidence:論拠」も述べることができていないので、悪いArgumentであると考えられます。
まとめ
日本語でもArgumentを意識して文章をつくる
今回の記事のポイントとして、
- Argumentは「主張・理由・論拠」の3つから構成される
- 異文化コミュニケーションの鍵は「抽象 → 具体」
- 各要素の「繋がり・関連性」を高める
上記の三点を覚えておいてください。
Argumentを意識して英語を作ることができるようになると、自然と説得力が増し、より意味のある情報を相手に伝えることができるようになります。
そうなると、相手は自然とあなたの言葉に意識を向け、コミュニケーションが円滑に進むようになります。
円滑なコミュニケーションを経験すればするほど、英語に対して自信が湧いてきて、いつの間にか英語をより自由に運用できるようになるでしょう。
しかしそのためには、英語力だけでなく日頃から母語でも自分の思考を整理する必要があります。
母語でシンプルに伝えられないことは、英語では絶対にシンプルに(分かりやすく)伝えることができません。
できるだけシンプルに、無駄な形容詞や副詞を使わずに情報を述べる訓練を欠かさないようにしましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。