「英語は強勢が重要なことはわかったけど、イマイチまだわからない」
前回の記事では、英語の強勢がかかるポイントについて紹介しました。しかし、慣れない英語を話すと無意識に全ての音節を同じ強さで発音してしまいがちです。
「どのような単語に強勢がかかるのか」と同じように、「どのような単語に強勢がかからないのか」についても理解することが重要です。
ということで今回は「文強勢を弱くするポイント」と、「弱く発音されることで変化する音」を説明していきます。
リスニング力を伸ばすために英語の「強勢」を習得しよう Part2
どの単語の矯正を弱くするのか
英語で文強勢を弱くするポイントは5つあります。早速ですが、例文を含めて確認してみましょう。
強勢が弱くなるポイント① 同一語が繰り返し発音される時
対話中に一度出てきた単語やそれに該当する語句は、文強勢を受けないで弱く発音されます。以下の例の赤字の部分は、音声が弱く発音されます。
同じ語句・該当する語句は弱く発音される
A. I like Mary but I don’t love Mary.
B. My brother was born in Nagoya, and he still lives in Nagoya.
C. They blamed each other.
例文から分かるように、対話中出てくる語彙以外でも、その語彙に該当する単語(例の場合[ each other ])は、同じ意味として扱われ強勢を受けません。
一部例外として、協調の意図で語句を繰り返す場合は強勢を受けるということがあります。覚えておくといいでしょう。
同じ意味の繰り返しで強勢がかかる 例
・He himself admit it.
強勢が弱くなるポイント② 文脈から類推できる時
[ book ]という単語を聴いた時に連想できる動詞は何があるでしょう?例えば [ read ] [ buy ] などの動詞は、[ book ] とセットで使われるケースが多いですよね。
そのことを踏まえて以下の例文を読んでみましょう。
類推できる単語は強勢がかからない 例
・I have some book to read.
・I have a point to make.
・I have a problem to solve.
上記の赤字の単語は、その前にある単語から意味が類推できるので文強勢はかかりません。
これは、情報がそこまで重要ではない(分かりきっている)からこその起こります。似たような文章でも、文脈から類推できない情報として重要度が高い単語は強勢がかかります。
似たような文章で強勢がかかる 例
・I have some book to burn.
・I have a point to emphasize.
強勢が弱くなるポイント③ 自分が起点になる情報の時
情報の重要度が低くなる結果、文強勢を受けないポイントとして、「ここ」「今」など自分の意識の中にある情報が起点になる時が挙げられます。
以下の例の赤字部分は、文強勢を受けません。
意識の中に入る語は強勢がかからない 例
A: How far to Shibuya?
B: About 10 minutes on foot from here.
I’m leaving for Osaka tomorrow.
地理的に自分を起点とした場合、時間的に「今日」「昨日」など意識の中にある単語は強勢を受けません。
強勢が弱くなるポイント④ 情報が自明の時
自明のことも同じように情報としての重要性は低く、文強勢は受けません。
以下の例を読んでみましょう。
自明のことがらは強勢がかからない 例
A: What a mess! What did you do while I was away?
B: It isn’t my fault.
Aさんが、Bさんのことを非難していることは自明なので、非難を表す [ fault ] は弱く発音されています。
強勢が弱くなるポイント⑤ 主語を強調する時
「あぁ!俺の髪が!(抜けてる…)」
「私のバッグ!(置いてきちゃった…)」
日本語でも上記のように、主語だけで情報の重要性を表現するケースがあります。その場合、主語以外の単語は、強勢がかからず弱く発音されます。
主語が強調される時は他の音に強勢がかからない 例
・My zipper won’t come up.
・The key’ve disappeared.
情報としての緊急性が高い時も重要性が高いと判断されます。日常茶飯事な表現ではありませんが、例外も理解しておきましょう。
文強勢によって音が変化するケース
単語の中には文強勢のある・なしで音声変化をおこすものがあります。例えば文強勢を受けることが比較的少ない、「冠詞」「人称代名詞」「前置詞」「助動詞」「接続し」は、本来の発音と文章内で発音される音に変化があります。
これから紹介する例の赤字部分は、母音が弱く発音される部分、または脱落がおこり音声変化している部分です。
文強勢がないと音声が変化するパターン① 冠詞
強勢がないと音声が変化する例「冠詞」
1. a [ ə ]
He wants to keep a cat.
強調により [ ei ] と発音される以外は弱く発音されます
2. an [ ən ]
An apple a day keeps the doctor away.
3. the [ ðə ]
Here’s the book I was talking about.
強調により [ ði: ] 発音される時以外は弱く発音されます
文強勢がないと音声が変化するパターン② 人称代名詞
強勢がないと音声が変化する例「人称代名詞」
4. he [ hi / i: / i ]
I think he knows it.
母音が弱くなるケースと、[ h ]の音が脱落します。以下7までは、文頭やポーズ後は脱落の音声変化はおきません
5. his [ iz ]
Do you know his sir name?
6. him [ im ]
Just give him a pat.
7. her [ (h)ɚ ]
I don’t see her very often.
8 .me [ mi ]
Will you pass me the salt?
母音が弱まります。以下の10まで同じように母音が弱まります
9. she [ ʃi ]
Ah, but she doesn’t like music.
10. you [ ju ]
Have you been there?
11 us [ əs ]
He made us laugh.
文強勢がないと音声が変化するパターン③ 前置詞
文の終わりに強勢をかけることで、その発話全体を強調する効果があります。例えば以下の例文の赤字に強勢をつけて発音してみましょう。
強勢がないと音声が変化する例「前置詞」
12. at [ ət ]
The shop is at the end of the street.
強調されない限り、弱く発音されます
13. for [ fɚ ]
I’ m looking for it.
母音が弱くなります
14. from [ frəm / frm ]
He worked from morning till night.
母音が弱くなったり、脱落したりします
15. of [ əv / ə ]
I could do with a cup of tea.
母音が弱まります。次の音に子音が続く場合 [ v ] の音が脱落します
16. to [ tə ]
Give it to me.
強調されない限り母音が弱くなります
文強勢がないと音声が変化するパターン④ 助動詞
強勢がないと音声が変化する例「助動詞」(be動詞含む)
17. am [ əm / m ]
I am the master of this house.
母音が弱まります。[ I’m ] と続く場合、基本的に発音される音は [ m ] のみになります
18. are [ ɚ ]
You’re wrong!
19. be [ bi ]
I’ll be with you in a minute.
20. been [ bin ]
John’s been to Tibet twice.
21. is [ z / s ]
He’s coming soon.
無声音に後に続く場合 [ s ] と発音されます
22. was [ wəz ]
He was playing golf.
23. were [ wɚ ]
They were playing soccer.
24. can [ kən ]
You can do it easily.
25. could [ kəd ]
He could not get it.
26. do [ du / də / d ]
Do you like it?
母音が弱まります。脱落して [ d ] の音のみになるケースもあります
27. does [ dəz / əz / s ]
What does he do now?
同じように脱落して語末音の [ s ] のみ発音されるケースがあります
28. have [ həv / əv / v ]
You have been there, haven’t you?
文頭やポーズの後を除いて [ h ] の音が脱落します
29. has [ həz / əz / z /s ]
Jane has been writing a report.
[ have ]と同様に [ h ] が脱落します。無声子音に続く場合 [ s ] と発音されます
30. had [ həd / əd / d ]
The train had just left.
31. must [ məst / məs ]
That must be our boss’s car.
32.shall [ ʃəl / ʃl ]
I shall be thirty-five next month.
33. should [ ʃəd / ʃt ]
You should tell me about it.
脱落した後に [ d ] の音が [ ʃ ] に同化して無声化、つまり [ t ] の音に変化します
34. will [ l ]
I’ll be there soon.
語末の [ l ] のみ発音されます
35. would [ wəd / əd / d ]
I would love to do that.
[ had ] と同じように脱落して語末の音のみが残ります。区別は文脈によって判断されます
文強勢がないと音声が変化するパターン⑤ 接続詞
強勢がないと音声が変化する例「接続詞」
36. and [ ənd / ən / n ]
I and you are the best friends.
母音が弱くなり、脱落することがあります。子音が後に続く場合、[ d ] の音は脱落し [ n ] の音だけ発音されます
37. as [ əz ]
He is as good as his boss.
38. but [ bət ]
I ran into his room, but hi was gone.
39. than [ ðən ]
This is better than that.
40. that [ ðət ]
I know that the earth is round.
文強勢がないと音声が変化するパターン⑥ その他単語
強勢がないと音声が変化する例「その他」
41. some [ səm / sm ]
Can I have some coffee?
単位のある量・数を表す時には母音が弱くなり、脱落することがあります
42. that [ ðət ]
All that glitter is not gold.
関係代名詞の [ that ] も母音が弱くなります
43. there [ ðɚ ]
There are a lot of nice restaurants here.
44. who [ hu / u: / u ]
The man who was arrested was innocent.
関係代名詞の [ who ] も母音が弱くなります。疑問文の場合は [ hu: ] とはっきり発音されます
以上です。いずれも強調されない場合をのぞいて、文強勢はかかりません。
英語の発音においては文強勢がかからない音が「普通の形」です。この文強勢がかからない音を「弱形」といい、「弱形」は日本語にはありません。
リスニング・スピーキングで課題を抱えている場合、「弱形」の理解不足原因となっているケースは多いのです。「弱形」を意識してスピーキングするだけで、英語のような音がだせるようになります。
英語の文強勢について まとめ
英語は日本語と同じ感覚で話さないことを理解しよう
少し例文が多くて大変でしたが、いかがでしたか?
発音ができているのに、英語が通じなかったり、リスニングで聞き取れない大きな原因の一つは今回紹介した「強勢」です。
「発音は合っているはずなのに、なんだか英語っぽくないな…」と、録音した自分の声を聞いて思う場合は、一度「強勢」について理解しましょう。
文章を強弱をつけて話せるようになるだけで、英語の音声に関する課題は激減するでしょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。次回は英語の音声構造について詳しく説明します。
英語力に伸び悩んでいる方は以下の記事をぜひ参考にしてくださいね。
英語のリスニング力を伸ばす方法シリーズ
序章:英語のリスニング上達方法まとめ【中上級者向け】
第1弾:英語のリスニングが上達しない7つの原因
第2弾:リスニング力を伸ばすために英語の「強勢」を習得しよう Part1
第3弾:リスニング力を伸ばすために英語の「強勢」を習得しよう Part2(今の記事)
第4弾:リスニング力を伸ばすために英語の「音節構造」を理解しよう Part3
第5弾:リスニング力を伸ばすために英語の「イントネーション」を理解しよう Part4
第6弾:リスニング力を伸ばすために英語の「母音」を習得しよう Part5
第7弾:リスニング力を伸ばすために日本語話者が苦手な「子音」を習得しよう【前編】
第8弾:リスニング力を伸ばすために日本語話者が苦手な「子音」を習得しよう【後編】
第9弾:リスニング力を伸ばすために適切なシャドーイングを繰り返そう【完結編】
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